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ご近所助け合い運動

 「いやー、何だか治ったみたい、ボクv」

 「良かった………ッ!悟浄!!」

 
「…死にますか、河童…」

  コトの後、悟浄宅では非常に心温まる会話が繰り広げられていた。
  ちなみに捲簾はさっさと一服してこちらなど眼中に無い。重ね重ね非道な奴らである



 「でも、本当に良かった。僕の所為で悟浄に一生の傷を負わせて女性達に今度は表立ってバカにされて心に傷を負って『これもそれも八戒の所為です』とか書いて自殺されたりすると外聞悪いなって思ってたんです」
 「…外聞?」
  悟浄が遠い眼をするが、脳内から今の発言記憶は速やかにデリートする事を決めたらしい。大丈夫だって、とか言いながら顔を拭いてやったりしている。
  どちらかというと『今度は表立って』っていう方が毒舌だと天蓬は思う。
 「天蓬、ありがとうございます!
  八戒に抱きつかれて天蓬は視線を彷徨わせた。いや、別にいいから着替えの続きをさせてくれ。
 「これも、天蓬のご指導ご鞭撻のおかげです」
  天蓬がそんな散文的な事を思ってるとも知らず、八戒は更に腕に力を込めた。肩ストラップを落とした天蓬は腕の動きを封じられ、床に視線を落としたまま顔も上げられない体勢だ。
  そこまで好きにさせている辺り、かなり八戒に弱いらしい。
 「あー、初めてにしては上手いと思ったんだよな」
  悟浄が納得する。勿論八戒が相手だということでかなり視覚的にも感情的にも良かったが、テクもそれなりではっきり言って少しヤバかった。
 「知識伝授して貰ったのか」
 「ええ、実技で」

 言うか普通。


  床しか見えない状態のまま、天蓬は部屋の気温が10度は下がったのを感じた。
 「…実技?」
  悟浄の声も低い。しかし、天然の八戒の口調は内容と相違して爽やかなものだった。
 「はい。教えて貰って、で、その後で実地指導をして貰ったんです。その節は本当にお世話になりましたよね、天蓬」

  同意を求めるか普通。

 「いっときますけどね。好きで教えたんじゃないですからね!」
  八戒の腕から抜けて、やっと天蓬はそう言い募るが、はっきりと手遅れだった。
  悟浄の眼が、本気である。
 「…俺より先に、八戒のクチもナニも味わった、っつーコト?」
 「頼んでません」
 「へー。ヤルじゃん天蓬」
  そういう話の流れだけ聞いている捲簾がクチを挟む。
  天蓬の、上司に対する殺意が更に高まった。



 「代償は、払ってもらうから」



  珍しく禁忌モードに入っている悟浄を横目で見て、天蓬は髪を掻き毟った。
  恋のキューピッドが嫉妬されるという展開は有りなのだろうか。



  不条理な日常は更に続く。

何だか浄天の予感だけ残して、終了ッス!!じゃ!!