「本当に有難うございます」
はにかむように八戒が笑った。
「…これで悟浄にちゃんとご奉仕出来ます」
それを聞いて、天蓬は物憂げに煙を天井に吹き上げた。
この自分のテクは、八戒経由であの河童が味わうのか。やっぱり自分は恋のキューピットvなのだろうか。
いや、キューピットだってフェラの伝授はしない。きっと。
「…それは良かったですねえ…」
解りやすい位テキトーな天蓬の返事にも八戒は嬉しそうに頷くと灰皿を引き寄せて天蓬に渡した。
「ええ、本当、いつもいつもどうやってお返ししたらいいか…」
あ、と可愛らしく八戒は口を開いた。
天蓬は何だか凄く嫌な予感がして、長かった煙草をもみ消した。
「そうだ、まず天蓬にご奉仕すればいいんですね?」
「いいんですね?じゃありません。結構です」
「でも…」
言葉を濁したまま、八戒は突然天蓬の細い腿裏に手を差し込んでひっくり返した。
完全にペースを乱され、天蓬は呆気なくベットに背中から倒れこむ。
「は、八戒?」
天界では身体を狙われる事なんて日常茶飯事だった。
だから天蓬は滅多に身体に触られる事すらない。その前に撃退している。こう見えて天蓬は強いので本気で抵抗すれば大抵床に伸びるのは襲ってきた野郎共である。無駄なのは捲簾と闘神相手位だ。
だが、同じ顔がにこにこと無邪気に笑っているのを見ると、どこまで本気で抵抗していいのか迷うのだ。悪気はないのも解っている。悪気がないからって全てが許される訳ではないのだが、でも殴ったり蹴ったりするのは躊躇われる。
やっぱり八戒に弱い天蓬が引き攣っているうちに、八戒は無造作にセーラーシャツの裾をぺろ〜んと捲り上げた。
もう地肌。
「あの、僕は結構なんですけど…」
「いえ、ほら復習にもなりますし、教えて頂くにもこっちの方が実践的ですし」
ちょっと待て八戒。教材扱いかコラ。
天蓬の、やっぱり何か間違っている気がする下界生活であった。