エイリアンだと、思った。


 実際そう結論付けて片付ける以外、天蓬には方法が無かった。
 彼の行動も情動も、天蓬には理解不能だった。
 ややこしいヤツではない。
 逆に明確すぎて意外なのだ。
 気まぐれから我儘を言う天蓬と違って、彼の我儘は首尾一貫している。
 そんな我儘あるか、と天蓬は頭を抱えた。
 本当に理解不能だ。


 きっと卵からでも生まれたエイリアンなんだろう。


 だから天蓬はそう結論付けた。
 彼の一本気過ぎる所も、気に入らないと妥協しない所も、まるで子供で。
 つまりは卵のまま成長していないエイリアンで。
 そのうち孵化するだろうと。


 更に言うなら、自分が目覚めさせ、成長させてやれれば、と思っていた。
 だから、彼を抱き締め、熱が移るように接した。


「有精卵だったら、孵ったかもしれないですけどね」


 天蓬の呟きに、エイリアンと評された上官は眉を上げた。
 反応はそれだけで、興味を覚えてもいない。


 彼は何一つ変わっていなかった。
 仕方ない。
 勝手に思い込んだのは自分だ。
 彼の殻の内側に、暖かいものがあるはずだと都合の良い夢を見た。


「オマエ意味不明」

彼はそれだけ言って背中を向ける。

「特に最近、余計判んねー」


 それは、彼に期待を寄せていた分だけ傷つきそうになった天蓬の防衛で。
 卵を暖めているつもりで、まるで自分の方が殻を被って卵になってしまったかのようなこの状態は笑い草だ。
 そう思いながらも自嘲すら出来ない天蓬に、広い背中から声がかかった。

「アンタはエイリアンじゃないかって軍の連中も言ってたぜ」




 彼と同じ呼称で呼ばれたとしても。
 彼と自分の星の間は一体何光年離れているのだろうか。

 同じものには結局なれなかった。



「お互い、孤独なエイリアンですね」


 天蓬はそう言って、やっと笑った。